【特集論考3/3】淡路島の歴史とトレイル~その過去・現在・未来を探る~(なぜ淡路島でロングトレイルプロジェクトを推進するのか?)

 淡路島は島の南部に位置する諭鶴羽山(標高 608m)および柏原山(標高 587m)の山系と、南北に縦断し六甲山系に連なる津名丘陵(400~500m)からなるが、淡路島全域に分布する花崗岩層からの湧水が 20 か所以上存在する。
 2015 年、淡路島の風土資産を掘り起し体験できるものとして、本格的なロングトレイルプロジェクトの開発が洲本市千草竹原集落から大学・地域・自治体の参画と協働のもと始まった。柏原山のふもとの小さな村、竹原集落は山間の棚田で飯米用の稲作、黒毛和牛(淡路ビーフ)の繁殖、原木椎茸の栽培、休耕田を活用したアジサイ観光園やシキミ栽培などを生業としている。
 淡路島の中央部に位置する洲本市の中心市街地から車で約 15 分走ると、四季を通じ多種多様な緑の木々や花々、多くの野鳥の鳴き声が聞こえる源流の郷(さと)竹原集落にアクセスできる。ここでは、古くは里山の手入れから得た淡路島の優占種樹木であるウバメガシを原料とする木炭を、燃料として生産していた。竹原コースを歩けば、当時の生業を思い起こすことができる多くの炭焼き窯跡に出会えるだろう。
 里地の小さな竹原集落は、水神祠、庚申塔(こうしんとう)、持国天、猿丸太夫祠、阿弥陀如来堂、東谷の山の神、諏訪明神社、西の谷の山の神の 8 つの祠が囲むように鎮座している。ふるさとの人々は神々とともに暮らしていた往時をしのぶことができる。
 島に賦存する生物多様性に富んだ豊かな自然のみならず、鰆(サワラ)、鱧(はも)、鯛、玉筋魚(イカナゴ)、チリメン雑魚、蛸等様々な美味しい食べ物を味わうことができる食文化、そしてさまざまな神話に出会うなど、「淡路島まるごと体験」を可能にするのが「淡路島ロングトレイル(ALT)」の理念でありプロジェクトの目標でもある。
 限界集落と呼ばれるような地域が日本列島各地に急増している中で、淡路島も例外ではない。淡路島から始まる里山・里地・里海のトレイル体験は、住民や自治体、更には地域外の多主体による参画と協働のもと、地域資源の多様性に触れ、その保全を通じた「持続可能な自治体の運営」への挑戦でもある。

参考文献:
文1)兵庫のふるさと散歩編集委員会:兵庫ふるさと散歩 淡路編、21 世紀ひょうご創造協会、1978.03
文2)司馬遼太郎:菜の花の沖、文芸春秋、2000.09
文3)淡路島日本遺産委員会:日本遺産 淡路島、2017.03
文4)独立行政法人環境再生保全機構:地球環境基金便り、No.44、2018.03

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2021.02.19

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